鍵をかける文化

私は現在、大阪に一人暮らしをしています。
実家のある町は、最寄り駅までクルマで30分、電車は30分に1回、コンビニに行くにもクルマがいる、典型的な田舎町です。
大阪の友人にそんな地元での話をしていると、非常に驚かれる話があります。
それは、鍵をかける文化がない、という話です。
普通、外出をする時はもちろんですが、家にいるときでも鍵をかけておく家は多いと思います。
実際、私も一人暮らしは物騒ですし、必ず鍵をかけるようにしていますが、それが私の地元になると必ずしもそうではありません。
実家の玄関は、内側から鍵をかけることはできましたが、外側からかける鍵というものを見たことがありませんでした。
外出の際、家に誰もいなくても鍵はかけずに開けっ放しが当たり前でしたし、家に子供しかいない場合でも鍵をかけたりはしませんでした。
唯一夜だけは鍵をかけていたのですが、雨や雪などの多い時期は新聞配達の方が朝早くから玄関の中に新聞を放り込んでくれるため、鍵をかけないこともしばしばでした。
一日中鍵が開いているので、基本的にインターホンも使われません。
お客さんはいきなり扉を開けて「ごめんくださーい」と家の人に向かって呼びかけますし、近所のよく知る人ならば、家の人が誰もいなくても、おすそわけのおかずを台所に置いていってくれたりします。
泥棒に狙われたら一発でアウト、防ぎようがなく、簡単に侵入可能です。
しかし、ここに田舎の良さがあります。
このご時世でもご近所付き合いは未だに根強く、よそから来た人は目立ちますし、不審な人が留守の家に入っていくのを見かけようものなら、すぐに大事になります。
田舎の人間関係が、最大の防犯になっているというわけです。
もちろん、最近は鍵をかける家も増えて来ましたし、犯罪の被害を受けないためにはそうするべきだとは思います。
田舎といっても、時代の流れには逆らえません。
しかし、実家にいる祖母は絶対に鍵をかけたくないと言います。
せっかく訪れてくれた人をしめだすようで、嫌なのだそうです。
被害が起きてからでは遅い、と言われるかもしれませんが、私はそれでいいと思います。
どうしても鍵をかけなければいけなくなった時、それは私の好きな地元の良さがひとつ失くなってしまった時かもしれません。